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Hyaku tai “百態”

Hyaku tai “百態”
18/03/2017 VaEnc

Hyaku tai “百態”

APARTMENT HOTEL SHINJUKUのサイト並びにAPS MAGAZINEのサイトデザインを担当しているVaEnc(ヴァ・エン・ク)です。

普段は鉛筆画制作をベースに活動していますが、ウェブデザインとグラフィックデザイン等も請け負っています。

あと名前に関しては、読みがよく分からない上に若干中2っぽいので、本名知ってる方はだいたい名字で私のことを呼びます。

 

私の詳細は下記ホームページより確認して頂けると幸いです。

vacantworks.com

 

今回ホテル宿泊者への記念品としてお渡ししているポストカードのデザインについて記事を書いてくれとの機会を頂き、投稿することになりました。散文になってしまうと思いますが、その旨ご了承を。

 

まず、「ホテルの御朱印を作って欲しい」というのがこの件の始まりでした。

『御朱印』というのは寺社仏閣に参拝した際に希望により頂ける参拝記念のサインの様なものです。

 

『御朱印』とは本来、神社やお寺の神様や御本尊にしっかりと参拝し、その信行の証に書いて頂けるありがたいものでした。

元々はただ行って直ぐに書いてもらうという事は出来なかったのですが、時代と共に、観光の記念や参拝の記念に書いて頂くというポピュラーにものになっていき昨今の形になったようです。

参拝する場所によっては同じ宗派限定の御朱印帳以外には書かない、しっかり参拝しないと書いて貰えないという所もあるので注意が必要です。

 

『御朱印』とはそういったものであるとの前提を踏まえ、今回はあくまで「その場所に行った記念の品」として捉えて御朱印の形式をデザインに取入れました。

なので受ける際に私は「御朱印風デザインの宿泊記念品」としてでいいかな?と了承をとり、制作にかかりました。

今回の仕事はあくまで「御朱印デザイン」です。

寺社仏閣のものではないので、特にありがたい意味は何もありません。

 

デザインの詳細

まずはデザインの分解しました。

御朱印に使う文字は大体2種から3種です。

  1. 祀られている神様、もしくは御本尊(思想的な文字、図形の場合もあります)
  2. 寺社仏閣の名称(地域名が入ることもあります)
  3. 参拝した日付

これ以外にも所によっては句であったり絵であったりと、基本的な形はあれ決まりは無いようです。

 

また、筆字の上には必ず朱印が押されます。

それも大体2~3種、ところによってはもっと多い所もあります。

  1. 祀られている神様、もしくは御本尊に関わるメインロゴの様な朱印
  2. 寺社仏閣の名称の朱印
  3. その他(七福神めぐりなど、地域にかかわるもの)

 

以上を踏まえた上で、今回のデザインには下記を採用し再構築を行いました。

文字に関しては

  1. ホテルのイメージになる思想的な文字、言葉
  2. 1,のイメージを補佐する様な文言

朱印に関しては

  1. ホテルのイメージの文字と地域名を分解しデザインしたもの(中央)
  2. 宿泊記念の文字(右上)
  3. ホテル名の和文(左下)

文字(テキスト)に関して

文字に関してはオーナーより私から選択肢を出してほしいとの事だったので、どうにか考えてみることに。

私自身の引出しは大分大したことないのでオリジナルは難しいと思い、一先ず兎に角書籍を漁りました。

書の本、仏教用語辞典、詩集などを中心に。

まずは中央に入る象徴的文字を決め、添える文字はその後にと考えながら探していった結果、見つけたのが宮澤賢治の詩『烏百態』。

雪の降った田圃の上に烏が降り立ち、また飛び立っていく様子を描いたもの。

ホテルの宿泊者たちを思い描いた時に、この詩が妙にハマったのでした。

雪の上に跡を残しながら思い思いに行動し、また飛び立つ。飛んでいった後は「ごまのごとくなり」と表現されているように、離れて、また戻ってくるかもしれない人々をホテル側はある種見ているだけ。

そんな宿場の一風景の様に見えるこの詩の側面と、様々な烏が一時同じ場所にいてまた思い思いの方向を向かうといった人々の異種多様性を描いたような側面を私は感じ、宿泊者の大半が海外の方であり、なるべく固定概念から離れようと様々な事を試みているアパートメントホテル新宿のあり方とこの『烏百態』の情景が私の中でこじつけられたでした。

「烏」ではなく「人」なので、「人百態」とでもしようかと思いましたが、よりダイバーシティ(異種多様性)を強調したいと思い「百態」とシンプルな二文字にしました。

御朱印ポストカードに同封されている説明文には、この「百態」のより詳細な意味が綴られています。

 

当初はこの「百態」だけにしようかと思ったのですが、地名や宿泊記念の文字は印鑑にする事になり、そうなると筆字が2文字だけは寂しいとなったので、左右に小文字で1行ずつ添える形になりました。

 

色々と候補を出して最終的に決まったのがこれ

「残躯天所赦 不楽是如何」、「ざんくはてんのゆるすところ たのしまずんばこれいかん」。

 

これは独眼龍 伊達政宗の晩年の漢詩です。

この詩への思いを元に、政宗公の末裔である伊達宗忠は「天赦園」という日本庭園を築庭し余生を過ごしました。

この漢詩の全文は

 

馬上少年過 (馬上少年過ぐ)
世平白髪多 (世平らかにして白髪多し)
残躯天所赦 (残躯天の赦す所)
不楽是如何 (楽しまずんば是如何)

 

若い頃は馬の上(戦場)で過ごし(戦に明け暮れたが)、今は髪も白くなり(老いて)世の中も平和になった。
今残っている体(残躯)は天が赦(ゆる)したものである(余生である)、これを楽しまずしてどうしようか(楽しめないのはどうしたことか)。

 

この詩自体は、太平の世に於いて天下を取れない悔しさを詠んだものだといわれています。(詳細はこちらより「伊達政宗の見た仙台を歩く」)

最後の行、「不楽是如何」。この部分をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかでこの詩の意味は全く異なるものになります。

私は先程、全文の意訳を「楽しまずんば是如何」としました。政宗公は戦乱の終わった時代に虚しさを感じてこの詩を詠ったのかもしれませんが、捉え方によっては状況が変われども「今」を楽しむとも捉えられます。

今の生を赦された余生と捉え、「今」を楽しまずしてどうするといった解釈として私はこの詩を使わせて戴くことにしました。

なので、上の二句を抜いて、下の二句のみで使用しております。

また、「不楽」の「楽」の字ですが、文字のバランスの関係で敢えて「樂」と旧字体で書かせて頂きましたが、本来は「楽」のようです。

 

宮澤賢治の「百態」(烏百態)、伊達政宗の「残躯赦所天 不楽是如何」。

異種多様性を表す言葉と、今を生きる姿勢を表した漢詩、此の2つの言葉を組み合わせる事でホテルのイメージ、思想的な部分を表させて頂きました。

 

 

また、デザインという意味では印鑑も作成したのですが、印鑑に関しては基本的に上記で説明した言葉と地名、「宿泊記念」の文字を印字的にデザインしただけなので、そこまで説明する事はありません。

しかし、強いて説明するとすれば、上記写真の一番右の「旅籠屋内藤新宿」の印鑑について。

 

これは「アパートメントホテル新宿」を日本語化しただけなのですが、「新宿」を「内藤新宿」と表したのは、今のホテルのある場所が元禄12年(1699年)に「内藤新宿」という名の宿場町として開設されたことに由来します。(正確には新宿一丁目から二丁目・三丁目の一帯との事なので、ホテルの位置が含まれていたかは不明ですが)

当時「内藤新宿」と言われていた一帯は、高遠藩内藤家の御座敷地でした。

「内藤」とは当時の地主の名前から取り、「内藤家の敷地に作られた宿場町」という意味を込め、「内藤新宿」を命名されたそうです。

「内藤」がとれて「新宿」が一般的になったのは明治以降、明治18年(1887年)に現在のJR新宿駅の元になる駅が「新宿駅」として開設されて以降、「新宿」の名称が広まり今に至るそうです。

 

 

また、印刷に関して今回金地の上に印刷するという経験が私になく、友人に印刷データの作成を結果的にお願いしました。

結果的にというのは彼の紹介の印刷業者さんを使わせて頂いた流れで、此のデータだと「百態」の文字が潰れるとなり、気づいたら修正してくれてました。

牧さんありがとう、本当に助かりました。

 

 

ざっと今回のデザインに関して説明させていただきました。

今後もアパートメントホテル新宿関連の事があれば報告できればと思っております。(また原稿依頼があれば)

今回はこの辺りで。

 

A little about Writer

Name : VaEnc (ヴァ・エン・ク)

 

Main Act : Pencil drawing Art

Others Act : Graphic design, Web design, Video art, VJ

Label : SHINKARON

 

GEISAI#16に於いて旅団として受賞、OUTLOOK FESTIVAL JAPAN LAUNCH PARTYでのVJなど活動の幅がムダに広く、自分でも何がしたいのかよく分からないが基本は生活優先なので粛々と働いている。いずれ都市計画に携わりたい。

 

Collaborator

牧 唯(マキ ユイ): http://makiyui.com